悪夢で目が覚めた。
子供のころに亡くした母の夢だった。
「最近は見てなかったのに──」

気づけば、日はすっかり落ち、辺りは夜に染まっている。
今は、訳あって祖母の家に来ている。

「暗いな……電気をつけよう」
そのとき──

ドン、ドン!
玄関を叩く音が響く。

「父さん……?」
そう思って扉を開ける。だが、そこには誰の姿もなかった。

代わりにあったのは──

ほとんど首だけになった、鶏の死骸。

背筋に寒気が走る。

そのとき、突然、電話のベルが鳴り響いた。
受話器を取ると、相手は父だった。
彼はこちらには来ていないという。

理由のない不安が、喉をからからにする。

台所へ行き、蛇口をひねって湯呑みに水を注ぐ。
それを無意識に、一気に飲み干した。

──その瞬間だった。

窓の向こう。
闇の中を、**白い“何か”**が通り過ぎた。

胸の奥がざわつく。嫌な感じが、じわりと広がっていく。
誰もいないはずの、祖母の家。
先ほどの死骸のこともある。確認せずには、眠れそうにない。

勝手口を開けた瞬間、鼻を刺すような血の匂いが立ち込めた。

暗がりの中──何かが、しゃがみ込んでいる。

白い肌。異様に長い四肢。

その背から、腰まで垂れ下がる黒い髪が、ぬめるように揺れている。

かすかに、骨をかじるような**くちゅ、くちゅ……**という音が聞こえた。

月の光が、その輪郭をゆっくり照らし出す。

……それは、明らかに、人ではなかった。

◇ 本記事の構成 ◇
・『ウツロマユ -Hollow Cocoon-』とは?──舞台・あらすじ・ゲームジャンルを解説
・『ウツロマユ』は何が怖い?音と気配、そして“異形の姿”が恐怖を完成させる
・『ウツロマユ』は怖いだけじゃない?ホラーが苦手な筆者が最後までプレイできた理由
・『ウツロマユ』は、ただのホラーでは終わらない

『ウツロマユ -Hollow Cocoon-』とは?──舞台・あらすじ・ゲームジャンルを解説


『ウツロマユ -Hollow Cocoon-』は、1980年代の日本を舞台にしたホラーアドベンチャー。

プレイヤーが操作するのは、男子大学生・陣場湊(じんば みなと)。
親元を離れ、都会で下宿生活を送っていた彼のもとに、ある夜、父から連絡が入る。
――母方の祖母・深山絹が危篤だというのだ。

母の生家がある村「一ノ瀬」へ向かう湊。
だが、その胸中は穏やかではなかった。

幼い頃に会ったきり、十年以上も疎遠だった祖母。
実の娘である母の葬儀にさえ顔を見せなかったその祖母に対し、
湊は以前から、嫌悪感を抱いていた。

田舎の山道を進むバスに揺られながら、
湊は、数少ない祖母との会話を思い出す。

――お蚕様はね、
 たとえ繭を出られても、
 もう口はないし、飛ぶこともできない。
 卵を産んで、死んでしまうの。

人が、そういう虫にしてしまったのよ。

まもなく、バスは深山家に到着する。
この地で湊は、隠された真実と、底知れぬ恐怖を知ることになる――。


本作は一人称視点で進行し、
プレイヤーは異形の存在に身を潜めながら、深山邸を探索していく。

“それ”から逃れ、生き延びるために、
先へ進み、謎を解き、点在する資料を読み解いていくことで、
やがて深山家にまつわる隠された真実が明らかになっていく。

難易度は3段階から選択可能。
物語の結末には影響しないため、自分のスタイルに合わせて自由にプレイできる。

また、本作は全4種類のマルチエンディングを採用。

プレイヤーの選択や行動によって、主人公・湊の運命は大きく変化していく。

本作の雰囲気をより直感的に感じられるように、NoirPix公式案内人のおるそなーさんにプレイしていただいた。
実際のプレイの様子はこちらのアーカイブからご覧いただきたい。

『ウツロマユ』は何が怖い?音と気配、そして“異形の姿”が恐怖を完成させる


『ウツロマユ -Hollow Cocoon-』は、追跡サスペンス型のホラー。
「いつどこで異形が現れるかわからない恐怖」――
この極限の緊張感こそが、本作の核である。

プレイヤーは、異形を撃退する術を持たない、ただの無力な存在。
見つかってしまえば、できるのは逃げることだけ。
常に“それ”に怯えながら、息を殺して探索を進めることになる。

異形の気配が近づくとき、静寂を裂くようにホワイトノイズがじわじわと響き始める。
この音が合図だ。近くに“何か”がいる――だから隠れろ、逃げろ。
だが皮肉なことに、そのノイズ自体が、恐怖をさらに掻き立てる。

音が鳴るのに、姿は見えない。
ただ、確実に“それ”が近づいてくる気配だけが、空間を満たしていく。
逃げるべきか、隠れるべきか。判断の一瞬が、生死を分ける。

そして、異形の姿がまた強烈だ。
長い黒髪に、真っ赤な目と血の滴るような唇。

見つかったその瞬間、咆哮とともに、蜘蛛を思わせる不自然に長い四肢が音もなく跳ね上がり、容赦なく迫ってくる。
何度遭遇しても慣れることはない。見つかるたびに、心臓が跳ね上がる。

舞台となる和風の屋敷もまた、恐怖を形作る重要な要素だ。

精密な3Dで表現された古びた家屋は、静かな狂気をまとい、ただ歩くだけでも背筋が冷える。
すーっと開く障子、湿気を含んだ畳、そして「ミシ…ミシ…」と軋む床板。
その一つひとつが、“何かがいる”という感覚をじわじわと植えつけてくる。

本作の恐怖は、ただ驚かせるだけではない。
目に見えない「気配」や、「気づかれているかもしれない」という緊張感が、プレイヤーの心を削っていく。

『ウツロマユ』は怖いだけじゃない?ホラーが苦手な筆者が最後までプレイできた理由


プレイしてみて、やはり恐ろしかったのは、「いつどこで異形が現れるかわからない恐怖」だった。
前述したように、異形の姿は何度見ても慣れることはなく、「絶対に見つかりたくない」と心から思わされる。

探索中は常に怯えながら、
「この軋んだ床の音で、位置がばれるのではないか」
「ライトの光は、今は消したほうがいいのかもしれない」

と、考え続けていた。怖さに震えながらも、その緊張感に引き込まれていった。

筆者はもともとホラーが苦手である。
正直、本作『ウツロマユ -Hollow Cocoon-』はとても怖いと聞いていたので、最後までプレイできるか不安もあった。

しかし、実際にプレイしてみると、怖いだけでは終わらなかった。
日本が舞台だからこその“和”の美しさ。
複雑に絡み合う登場人物たちの愛や憎しみ。
そして、主人公・陣場湊に襲いかかる衝撃の真実。

ストーリーは、点在する手記などの資料を通して語られていく。
はじめはバラバラだった情報が、徐々に一本の線につながり始める。
その過程に引き込まれ、恐怖に震えながらも、最後まで目が離せなかった。

「怖そう」とプレイを躊躇している人もいるかもしれない。
だが本作には、追われる恐怖を超える切なさと美しさ、そして驚きに満ちた物語がある。
難易度を下げれば、恐怖の負荷はある程度抑えられる。

少しでも気になっているなら、ぜひ一度、その世界に触れてみてほしい。

『ウツロマユ』は、ただのホラーでは終わらない


恐怖に怯えながらも、気がつけば物語に引き込まれ、最後までプレイしていた。
『ウツロマユ』は、“怖い”という感情を通して、もっと深い何かを描いている。

誰の心にも潜む「嫉妬」。
血のつながりによる家族愛。
そして、偏愛とも呼べるような、ねじれた愛情。

そんな感情のひとつひとつが、和風の世界観と絡み合い、
恐怖の中に、淡く滲むような美しさを生み出している。

Jホラーが好きな人はもちろん、
怖さの中に物語性や美しさを求める人にこそ、ぜひ手に取ってみてほしい。
たとえホラーが苦手でも、この作品にしかない体験が、きっとあなたを待っている。

引用・参考情報について
本記事で使用したスクリーンショットおよび情報は、以下に基づいております。

スクリーンショット: 『ウツロマユ -Hollow Cocoon-』のゲーム内プレイ映像より取得(購入版を使用)
ゲーム仕様・特徴: 『ウツロマユ -Hollow Cocoon-』のSteam公式ページを参考

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