※本稿では物語の核心には触れていませんが、白紙で体験したい方は閲覧にご注意ください。
人魚の肉を食べると、不老不死になる。
そんな伝承が、日本には残っている。
『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』は、三重県伊勢志摩地方を舞台とした青春群像伝奇ミステリーだ。
前作『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』から続く本シリーズの面白さは、
怪談や伝承という題材そのものにとどまらない。
それらがどのように物語の構造へ組み込まれ、プレイヤーがどこに立たされるのか。
本稿ではネタバレを避けつつ、その仕組みと体験について触れていく。
ライター/nerikeshi
| 目次 |
|---|
| 『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』の作品概要と舞台 |
| 『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』のゲームシステム |
| 前作『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』との違い |
| 『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』プレイ感想 |
| 人魚の肉は、食べるべきか |
『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』の作品概要と舞台
『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』は、スクウェア・エニックスが手がけるホラーミステリーADV『パラノマサイト』シリーズの最新作だ。
舞台となるのは、伊勢志摩地方の海に浮かぶ架空の島「亀島」。
人魚にまつわる伝承が残るこの土地を中心として、不可解な出来事が次々と起こる。
亀島は架空の島だが、開発者インタビューでは三重県の離島「神島」をモデルとしていることが語られている。
※ファミ通.comインタビュー(https://www.famitsu.com/article/202602/66028)
プレイヤーは複数の人物の視点を行き来しながら物語を追い、
断片的に語られる出来事や情報をつなぎ合わせていくことになる。
本作はシリーズの特徴であるミステリー構造を受け継ぎつつ、
人魚伝承という新たな題材を中心に物語が展開されていく。
タイトル:パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語
ジャンル:青春群像伝奇ミステリー
発売元:スクウェア・エニックス
発売日:2026年2月19日(Steam版は2月20日)発売中
プラットフォーム:Nintendo Switch™/Steam®/iOS/Android
※いずれもダウンロード販売のみ
希望小売価格:2,480円(税込)
CERO:C(15歳以上対象)
『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』のゲームシステム
本作の基本的なゲームシステムは、前作『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』を踏襲している。
ジャンルは「青春群像伝奇ミステリー」。
前作では「ホラー」という言葉が前面に出ていたが、本作では「青春」というワードが掲げられている点も特徴だ。

プレイヤーは複数の人物の視点を切り替えながら、断片的に語られる物語を追っていく。
各キャラクターの行動や選択によって状況は変化し、物語の進行や結末にも影響を与える。
単純な一本道ではなく、視点の移動と選択を繰り返すことで、全体の真相が徐々に浮かび上がっていく構造だ。

シリーズの特徴でもある「資料」や「人物リスト」も健在。
物語の中で得られた情報は資料として蓄積され、登場人物の関係性や背景を整理することができる。
こうした情報を読み返しながら状況を理解していく過程は、本作を単なるノベルゲームではなく、
プレイヤー自身が推理に関わる体験へと変えている。
その意味で本作のシステムは、小説や映画では味わえないゲームならではの面白さを表現していると言えるだろう。
前作『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』との違い
前作のシステムを大きく変えるような要素はない。
基本的な構造は『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』を踏襲している。
あえて新しい要素を挙げるなら、素潜り漁のミニゲームだ。
シンプルな内容ながら、スコアアタックに思わず熱中してしまう不思議な魅力がある。

大きく変化しているのは舞台だ。
前作が東京・本所の下町を舞台としていたのに対し、本作は三重県の伊勢志摩地方へと移っている。
都市の怪談から、海辺の伝承へ。
下町のくすんだ空気感から、海に囲まれた開放的な雰囲気へと、作品全体のイメージも大きく変化した。
前作では怪談が物語の中心に据えられていたが、本作ではより「伝承」や「歴史」に焦点が当てられている。
ジャンル表記から「ホラー」という言葉が外れているのも、その方向性を象徴しているのかもしれない。
怖さよりも、どこか神秘的な空気が強まった印象だ。
キャラクターの雰囲気もまた、舞台に合わせて変化している。
離島らしい快活さを感じさせる人物が多く、前作とはまた違った魅力がある。

大人しそうな外見ながら、ふとした瞬間におとぼけた一言を口にする人物。
霊能力を持ち、どこか頼もしさを感じさせる人物。
そして情に厚く前向きで明るい、絶対友達になりたいような人物。
これほど多くの個性的なキャラクターを自然に描き分けている点には、プレイしながら感嘆させられた。
物語の雰囲気については、ネタバレに触れる可能性があるため詳しく語ることは控えたい。
ただ一つ言えるのは、前作に匹敵する完成度の物語だったということだ。
なお、前作をプレイしてから本作を遊ぶべきか迷う人もいるかもしれない。
筆者としては、どちらからプレイしても問題なく楽しめると感じた。
舞台が大きく異なるため、本作単体でも十分に物語は成立している。
ただし、シリーズの世界観は共有されており、前作を思わせる断片が随所に散りばめられている。
前作を遊んだ人には小さな発見として楽しめるだろうし、
本作から入った人が後に『本所七不思議』を遊べば、答え合わせのような楽しみ方もできるはずだ。
どちらの順番でも、上質な体験になるだろう。
前作『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』については、以前レビュー記事を書いているので、そちらもあわせて読んでいただければシリーズの魅力がより伝わると思う。
▶︎前作レビュー:https://noir-pix.com/?p=1059
『パラノマサイト FILE38 伊勢人魚物語』プレイ感想
本シリーズの魅力は、やはり独特の没入感にある。
複数の人物の視点を行き来しながら物語を追っていく構造は、一見すると断片的に感じられるかもしれない。
しかしプレイを進めるにつれて、それぞれの出来事が少しずつつながり、物語の輪郭が浮かび上がってくる。

その過程でプレイヤーは、ただ物語を読む存在ではなく、物語に深く関わる感覚を体験するようになる。
登場人物の行動や情報を整理しながら状況を理解していくことで、自然と事件の内部に立たされていくのだ。
シリーズの特徴でもある資料や人物リストも、この体験を支えている。
物語の途中で得られる情報を読み返すことで、断片的だった出来事が意味を持ち始め、推理する楽しさが生まれていく。
その過程を経て、プレイヤーは「読者」ではなく「観測者」として物語に関わることになる。
そして物語が進むにつれ、その立場すら揺らぎ始める。
前述した通り、この感覚は小説や映画ではなかなか味わえない。
ゲームという媒体だからこそ成立する、パラノマサイトならではの面白さと言えるだろう。
また、本シリーズは現実の地域と密接に結びついていることも魅力の一つだ。
いわゆる“聖地巡礼”をしたくなるシリーズでもある。
パラノマサイトで描かれる物語の背景は美しく、神秘的な伝承の魅力もあり、現地に足を運んでみたくなる。
本作ではミニゲームとして素潜り漁も楽しめるが、プレイしているうちに海産物が食べたくなってしまった。
本当は現地に行って海鮮を楽しみたいところだが、筆者はいまのところスーパーの刺身で我慢している。
また、本作は魅力的なキャラクターが多いことも大きな特徴の一つだ。
様々な個性の強いキャラクターが登場するが、特に印象深かったのは外国人作家のアヴィ。
底抜けに明るくユーモアがありながら、自分に正直で、やるべきことはしっかり決断できる人物だ。

本作の空気感にアクセントを加えてくれているキャラクターとも言えるだろう。
一緒にいるキルケという少女との掛け合いも微笑ましく、見ていて思わず頬が緩んでしまう。
本作をプレイする際は、ぜひ彼の魅力にも注目してほしい。
ほかにも語りたいキャラクターは多数いるが、ネタバレにつながるためここでは控えておく。
パラノマサイトシリーズは、他の人と“語り合いたくなる”作品でもある。
コミュニティなどを見つけて参加してみると、より深く本作を楽しめるかもしれない。
人魚の肉は、食べるべきか
八百比丘尼伝説では、人魚の肉を食べた女性が不老長寿――あるいは不老不死を得たと語られている。
皆さんは、人魚の肉を食べたいと思うだろうか。
「死」は、人間にとって最大の恐怖の一つと言えるだろう。
その恐怖から逃れることができるのなら、手を伸ばしたくなる気持ちも理解できる。

しかし、たとえ自分が死から逃れることができたとしても、他人の死から逃れることはできない。
愛する人や大切な人を見送り続け、自分だけが取り残されていくとしたら――それはきっと、想像以上に孤独な時間になるはずだ。
愛する人を失いたくない。
だからこそ、その人にも不老不死になってほしいと思う人もいるかもしれない。
だがそれは、自分の恐怖や悲しみを相手にも背負わせるという意味では、どこか残酷な願いにも思える。
そう考えると、不老不死を選ぶ人はそれほど多くないのかもしれない。
しかし、もし死の恐怖が目の前に迫ったとき、同じ考えでいられる自信が筆者にはない。
もう一度、問いかけたい。
皆さんは、人魚の肉を食べたいと思うだろうか。
本作は、その問いを簡単には手放させてくれない作品だった。
※画像について
本記事では、アイキャッチ画像および一部の画像に公式サイト掲載の画像を使用しています。
ゲーム画面は筆者が購入した製品版から撮影したものです。
※掲載画像の著作権は各権利者に帰属します。
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