Pumpkin Miso Studioが開発するPC(Steam)向け夜勤サバイバルホラー『Night Portable(ナイトポータブル)』の無料体験版が、2026年9月5日に一般公開される。

本作の舞台は、2000年代の中古ゲームショップ。プレイヤーは深夜0時から午前6時まで、清掃や品出しといった夜勤業務をこなしながら、店内を徘徊する怪異から生き延びることになる。

特徴的なのは、3Dで描かれる夜勤サバイバルと、3種類の2Dレトロ携帯ゲームがひとつのシステムとしてつながっていることだ。携帯ゲームで獲得した報酬は夜勤を生き延びるためのアイテムへと変わる。しかし、ゲームに夢中になっている間も、背後を徘徊する怪異は待ってくれない。

無料体験版は、9月5日に開催される配信イベント「インディーライフストリーマーズ TRIP THREE(ILS3)」の放送終了後、遅くとも同日20時までにSteamで一般公開予定。日本語・英語に対応し、想定プレイ時間は約15~20分となっている。

今回NoirPixでは、一般公開に先駆けてPumpkin Miso StudioよりSteam Playtest版の提供を受け、本作の体験版をプレイする機会を得た。

レトロゲーム、2000年代のゲームショップ、ローポリゴンで描かれた少し寂しい空間。

どれも懐かしさを感じさせるものばかりだ。

しかし、そこへ「見えない怪異」が入り込んだ瞬間、その懐かしさは美しい恐怖へと姿を変える。

ゲームをしている場合じゃない。でも、ゲームをしなければ生き残れない。

そんな奇妙な夜勤を、ひと足先に体験してきた。

懐かしいゲームショップは、なぜこんなにも恐ろしいのか


『Night Portable』の舞台は、2000年代の中古ゲームショップだ。

ローポリゴンで描かれた店内には、どこか懐かしい空気が漂っている。ゲームが並んだ棚、少し無機質な床、深夜の店内を照らす照明。決して豪華ではないその風景には、昔のゲームで見たような温かさがある。

しかし、そこに人はいない。

深夜のゲームショップにいるのは自分だけ。

そう意識した瞬間、懐かしかったはずの風景が、少しずつ違うものに見えてくる。

店という場所は、本来なら人がいることを前提に作られている。商品が並び、照明がつき、誰かが歩くための通路がある。昼間なら何でもない空間なのに、人の気配だけが消えると妙に広く、寂しく感じられる。

そして、その静かな店内には「何か」がいる。

『Night Portable』が描くのは、血まみれの惨劇が広がるような分かりやすい恐怖ではない。

懐かしい場所が、少しずつ知らない場所へ変わっていく恐怖だ。

ローポリゴンという表現も、その感覚を強めている。

物体の輪郭は分かる。しかし、細部までは見えない。

現代的なフォトリアル表現なら描かれてしまうものが、そこには描かれていない。

だからこそ暗闇の向こうにあるものを、自分の頭の中で補完してしまう。

この「足りなさ」が美しい。

そして、ホラーになると恐ろしい。

『Night Portable』には、レトロゲーム特有の不完全な映像表現だからこそ生まれる、想像する余白の恐怖がある。

午前6時まで働く。それだけのことが、命懸けになる


プレイヤーの目的自体は非常にシンプルだ。

深夜0時から午前6時までゲームショップで働き、品出しや掃除など6つのタスクを終わらせる。

普通なら単なる作業だ。

ところが、店内には女性型の怪異が徘徊している。

しかも、その姿は基本的に見えない。

そのため『Night Portable』では、店内を歩くという何でもない行為にすら緊張がつきまとう。

早く仕事を終わらせたい。

だから走りたい。

しかし、走れば音を聞きつけられる。

暗いから懐中電灯を使いたい。

部屋の電気もつけたい。

しかし、明かりを使えば発見される危険が高まる。
つまり本作では、自分を安心させる行動が、そのまま自分を危険にさらす行動にもなっている。

暗闇が怖いから明かりをつけたい。

でも、明かりをつけるのも怖い。

この矛盾が面白い。
プレイヤーは「怖いから安全な場所へ逃げる」のではなく、怖いと思いながら仕事を続けなければならない。

午前6時まで働かなければならないのだから。

見えない怪異――恐怖は「姿」ではなく「気配」から始まる


異形が近づくと、画面にノイズが走る。

そして異音が聞こえてくる。

その瞬間、一気に身体が緊張する。

いる。

それだけは分かる。

しかし、どこにいるのかは分からない。

ここが本作の恐ろしいところだ。

ホラーゲームでは、恐ろしい怪物のデザインそのものが恐怖になることも多い。しかし『Night Portable』では、怪異を「見る」より前に、まず怪異の「気配」を感じさせる。

音。

ノイズ。

足音。

暗闇。

プレイヤーに与えられるのは断片的な情報だけ。

人間は、分からないものを想像する。
そして往々にして、頭の中で作り上げた「何か」は、実際に見せられたものより恐ろしい。

そこからジャンプスケア的な演出が来ることもある。

分かっている。

そろそろ来る。

そう思って身構えていても怖い。

恐怖そのものが突然現れるというより、「来るかもしれない」という時間を長く過ごさせられることが怖いのだ。

『ウツロマユ』を思い出した――音を聞いた瞬間、行動が変わる


この感覚で個人的に思い出したのが、『ウツロマユ – Hollow Cocoon -』だった。

『ウツロマユ』でも、怪異が徘徊する空間を探索しながら、足音や不気味な音から相手の接近を察知することになる。

恐ろしいのは、怪物を見た瞬間だけではない。

音を聞いた瞬間から、それまで普通に歩いていた廊下が危険な場所へ変わる。

「近くにいる」

その情報ひとつで、プレイヤー自身の行動が変化してしまうのだ。

『Night Portable』にも、それと似た緊張がある。

ただし、大きな違いがある。

こちらは敵の姿が見えない。

『ウツロマユ』では、怪異そのもののおぞましい姿も恐怖を構成する重要な要素だった。そのため単純に両者を並べることはできない。

一方、『Night Portable』は「見えない」こと自体を武器にしている。怖いものを見せるのではなく、怖いものがそこにいると信じさせる。

同じ徘徊型の恐怖でも、そのアプローチには違いがある。

安全になるために、最も危険なことをする


そんな怪異への対抗手段となるのが「フラッシュ」だ。

怪異へ向けてフラッシュを焚けば、一時的に追い払うことができる。
さらに、怪異を一時的に視認できるようにする薬や、フラッシュのバッテリーを回復するアイテムも存在する。

当然、欲しい。

しかし、そのアイテムを手に入れる方法が面白い。

プレイヤーは小型ゲーム機を取り出して、ゲームを遊ばなければならない。

「ゲームの中でゲームを遊ぶ」が、こんなにも怖い


小型ゲーム機には、ブロック崩しや縦型シューティングなど、ファミコン時代を思わせる3種類のレトロゲームが収録されている。

このゲームでポイントを稼ぐことで、3Dの夜勤パートで使用できるアイテムを獲得できる。

つまり2Dゲームと3Dホラーが、単なるミニゲームと本編という関係ではなく、ひとつのゲームシステムとしてつながっている。

そして重要なのは、ポイントを稼ぐほど報酬が増えること。

もっと欲しい。

あと少しだけ続けたい。

そんな欲が出てくる。

しかし失敗すれば、怪異を呼び寄せてしまう。

だから途中で報酬を確定することもできる。

安全を取るか、欲張るか。

ここまではリスク・リターンを扱ったゲームでは珍しくない。『Night Portable』が面白いのは、そこにもうひとつの恐怖を重ねていることだ。

画面を見ている間、あなたは「店」を見ていない


携帯ゲームを遊んでいても、店内の時間は止まらない。

怪異も止まらない。

これが本当に嫌だ。

縦型シューティングを遊んでいるなら、当然、敵弾を見なければならない。

ブロック崩しなら、ボールを追わなければならない。

ゲームというものは、プレイヤーに「画面を見ろ」と要求する。

ところが『Night Portable』は、同時にこう言ってくる。

「画面ばかり見ていて大丈夫か?」

ゲームに集中すればするほど、周囲への注意が失われる。

逆に怪異が気になれば、目の前のゲームへ集中できない。

ここに、本作ならではの面白さがある。

普通、ゲームに集中することは正しい。上手にプレイするためには画面を見て、音を聞き、ゲームの世界へ意識を向ける。

しかし『Night Portable』では、ゲームに集中するという行為そのものが恐怖になる。

これはなかなか面白い逆転だ。

「あと少し」が怖い。プレイヤー自身の欲が恐怖を作る


さらに巧いと思ったのが、報酬を途中で確定できることだ。

もし一定時間ゲームを遊ぶだけでアイテムが手に入るのであれば、これは単なる作業になってしまうかもしれない。しかし、自分でやめるタイミングを決められる。

だから怖い。

もう十分だ。

そう思っているのに、あと少しポイントを稼げば報酬が増える。

まだいけるんじゃないか。

もう少しだけ。

そして、その「もう少し」の間にも怪異は動いている。

つまり危険を生み出しているのは、ゲーム側だけではない。

プレイヤー自身の欲だ。

安全のためのアイテムが欲しいから、危険を冒してゲームをする。

安全になりたいから危険になる。

ここでも、本作は相反するものを重ねている。

夜勤が終わる。そして、今度は物語そのものが怖くなる


体験版では午前6時までに6つのタスクを終えれば、1日分の夜勤は終了となる。

だが、そこで恐怖は終わらない。

その後、ゲームは横スクロール型のアドベンチャーパートへ移行する。

ここから、ゲームショップと怪異につながる物語の一端が見えてくる。
夜勤パートの恐怖が「そこに何かいる」という身体的な緊張だとすれば、こちらは少し違う。

何があったのか分からないことが怖い。

すべては語られない。

すべては見えない。

断片だけが置かれている。

だから続きを知りたくなる。

そして、知りたいのに、知るのが少し怖い。

この感覚もまた、日本のホラーらしい。

見せない恐怖。その余白に怪異が棲んでいる


『Night Portable』を体験して印象に残ったのは、怪異そのものよりも「怪異がいない画面」だった。

誰もいないゲームショップ。

何もいない通路。

暗い部屋。

ただ並んでいるゲーム。

そこに異音がひとつ加わるだけで、それまで何でもなかった景色が恐ろしいものへと変わる。

これは、本作のローポリ表現ともよく噛み合っている。

高精細ではない。

すべてが見えるわけでもない。

だからこそ、想像してしまう。

暗闇の向こうに何がいるのか。
さっき聞こえた音は何だったのか。
何も見えないあの通路を、本当に進んでいいのか。

見えない場所を、人間は勝手に怖いもので埋めてしまう。

『Night Portable』は、そんな人間の想像力そのものを利用したホラーなのだと思う。

音を立てたくない。

何かの気配を聞き逃したくない。

そうやって暗闇に耳を澄ませていると、ゲームの音ではないものまで妙にはっきりと聞こえてくる。

自分の唾を飲み込む音を、こんなにはっきりと聞いたのは久しぶりだった。

レトロで、美しい。そして恐ろしい


レトロゲーム。

2000年代の中古ゲームショップ。

ローポリゴン。

小さな携帯ゲーム機。

どれも懐かしさを感じさせるものだ。しかし、深夜になり、人が消え、そこへ怪異が入り込む。

すると懐かしさは寂しさへ変わる。

寂しさは不安へ変わる。

そして不安は、やがて恐怖になる。

それでも、その風景はどこか美しい。

『Night Portable』には、そんな「レトロで美しい怖さ」があった。

怖いものを大量に見せるのではなく、見せない。

何かがいる。

でも見えない。

何かが起きた。

でもすべては分からない。

ゲームをしたい。

でもゲームをしている場合ではない。

明かりをつけたい。

でも明るくするのも怖い。

安全になりたい。

だから危険を冒す。

『Night Portable』では、相反する感情や行動が何度も重なっている。

そして、その間に生まれるわずかな隙間へ、怪異が入り込んでくる。

見えないから怖いのではない。

見えないものを、自分で想像してしまうから怖い。

短い体験版だったが、映像と音、ゲームシステム、そして物語。そのすべてが同じ方向を向いて恐怖を作っていた。

レトロゲームとゲームショップという懐かしい記憶の中に、日本のホラーが持つ「見えない恐怖」を忍ばせる。

その暗闇には、不思議なほど美しい恐怖があった。

作品情報


項目 / Field内容 / Details
タイトル / TitleNight Portable(ナイトポータブル) / Night Portable
ジャンル / Genre夜勤サバイバルホラー / Night-shift survival horror
プラットフォーム / PlatformPC(Steam) / PC via Steam
OSWindows
プレイ人数 / Players1人 / Single-player
言語 / Languages日本語・英語(インターフェース/字幕) / Japanese and English interface and subtitles
体験版 / Demo無料、約15〜20分(リトライなどにより個人差あり) / Free, approximately 15–20 minutes (varies depending on retries and play style)
製品版 / Full game2026年発売予定 / Planned for 2026
開発・販売 / Developer & publisherPumpkin Miso Studio

※本記事は、Pumpkin Miso Studioより提供された『Night Portable』Steam Playtest版をプレイし、執筆しています。製品版および2026年9月5日に一般公開予定の体験版では、内容や仕様が変更される場合があります。

※記事内のゲーム画像は、Pumpkin Miso Studioより提供された素材およびSteam Playtest版をプレイ中に撮影したスクリーンショットを使用しています。

ライター/Nerikeshi